日本物理学会 The Physical Society of Japan

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寺田寅彦資料群と関連史跡(寺田寅彦邸跡と居室)

Terada Torahiko Materials and the Related Historical Sites (Site of Terada Torahiko Residence)

高知県立文学館寺田寅彦記念室

認定番号

001

区分

第2種

所在地

高知市丸ノ内1-1-20(高知県立文学館)、高知市小津町4-5(寺田寅彦記念館)

所有者・管理者

高知県立文学館:高知県(所有者)、公益財団法人高知県文化財団(管理者);高知市史跡「寺田寅彦邸跡と居室」:高知市(所有者・管理者)、運営は民間団体(寺田寅彦記念館友の会)に委託(令和8年度現在)

範囲と内容

高知県立文学館内の寄贈された寺田寅彦に関する資料(目録に整理された2,229点ほか一部未整理の科学関連資料800点ほど)、高知市寺田寅彦記念館(寺田寅彦邸跡と居室)と提示資料

年代

資料:1890頃年から1940年頃まで

記念館:戦争で焼失した茶室と主屋は昭和52年と59年に再建、戦災を逃れた寺田寅彦の勉強部屋であった居室(離れ)は老朽化により平成2年に改築

文化財指定等

高知市寺田寅彦記念館は「寺田寅彦邸跡と居室」として高知市史跡に指定(1967(昭和42)年5月13日)

認定理由

寺田寅彦は、初期のX線結晶学における業績に加えて、「寺田物理学」と称される身近で多彩なテーマの研究を行い、地球物理学を含む多くの分野で弟子を育てたと同時に、夏目漱石に師事した随筆家としても知られる。本件は、寺田関連の事績のみならず、明治から昭和初期にかけての物理学のあり方を理解する上で重要な資料群・史跡である。

画像

解説

「天災は忘れられたる頃来る」の警句でも知られる寺田寅彦の存在は、日本の物理学の黎明期にあって燦然と輝いている。初期のX線結晶学における業績に加えて、「寺田物理」と称される身近で多彩なテーマの研究を行い、多くの分野で弟子を育て学問の礎を築いた。西川正治(結晶学)、中谷宇吉郎(物理学:雪氷学)、坪井忠二(地球物理学)、宇田道隆(海洋物理学)、平田森三(物理学:割れ目の研究)らである。

高知市寺田寅彦記念館(寺田寅彦邸跡と居室)は、1878年に東京で生まれた寺田寅彦が1896年に熊本の第五高等学校に入学するまでの間の約15年間を過ごした地にある。記念館と少し離れたところにある高知県立文学館は、遺族によって寺田寅彦の資料が高知県に一括して寄贈されたことにより1997年に設立され、館内に「寺田寅彦記念室」を有している。高知県立文学館と高知市寺田寅彦記念館には寺田寅彦に関する資料が大量に保存されており、それらは日本における物理学の黎明期の研究・教育を理解する上で欠くことのできない重要なものである。

寺田寅彦は、その幼少期を美しく魅力あふれる土佐の豊かな自然の中で過ごした。少年期の1891年には顕微鏡を買い与えられ科学研究において物理現象を精細に観察する手法を身に付けた。さらに、1895年11月に撮影されたレントゲンによる最初のX線写真を1896年4月に雑誌で見たとの記録があり、このことが後の「X線結晶学」の研究につながっている。この様に、高知で過ごした日々が、後に科学者として大きく才能を花開かせることにつながっている。

高知市寺田寅彦記念館には、少年期に父に買ってもらった蒸気機関実験模型、留学に使ったとされる旅行カバンや自筆の手紙なども展示されている。「寺田寅彦先生邸址」などの碑文は交流のあった牧野富太郎によるものである。

寺田寅彦記念室は高知県立文学館の中で大きな一画を占めている。随筆家としての寅彦と共に「科学者寅彦」の展示も充実している。「初期の純粋物理」から防災や生活についての科学に関するものが自筆のノートなどと共に展示されている。それらを含めて高知県が所有している資料は、主に遺族から寄贈されたものであり、一部未整理ではあるが約3,000点に上る。

これらの寺田寅彦関連資料は、夏目漱石からの自筆の水彩絵はがきや正岡子規からの書簡、楽器や絵画も含まれる。それらは寺田寅彦の科学研究と不可分であり、寺田寅彦が「科学随筆」という分野を創設したことを知るためにも必要な貴重な資料と言える。一例としては、漱石の俳句「落ちざまに虻を伏せたる椿かな」の科学的検証をのちに寺田寅彦が行ったことでも知れる。

寺田寅彦は、幼少時に高知で見聞きした自然現象である山火事、海鳴り、夕凪などについて、のちに随筆や論文に著している。また、1903年に本多光太郎らとともに、海水振動の調査のために高知を訪れており、潮汐の副振動についての研究も行っている。このことからも、のちの海洋物理学の研究についても高知の自然から生まれたと考えられる。寺田寅彦資料と記念館は、そのことも示している貴重なものである。

所在地

※地図内の位置は、「高知市寺田寅彦記念館」を示している。

公開状況

高知県立文学館寺田寅彦記念室は見学可。所有の資料は申出により閲覧可。保存資料はすべて収蔵庫に保存してあり、劣化し易い資料の展示には複製が用いられている。高知市寺田寅彦記念館と展示資料は見学可。

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