認定番号
004
区分
類別
所在地
川崎市中原区下沼部1753 NEC玉川事業場
所有者・管理者
日本電気株式会社
範囲と内容
透過型電子顕微鏡本体(Topcon EM-002B)、付属する備品類、カーボンナノチューブの模型、カーボンナノチューブ発見の論文
年代
1988年(電子顕微鏡設置)
文化財指定等
特になし
認定理由
本件は、飯島澄男が1991年に多層カーボンナノチューブを、1993年に単層カーボンナノチューブを世界で初めて発見した際に使用した、高分解能透過型電子顕微鏡である。カーボンナノチューブの発見はその後のナノサイエンスやナノテクノロジーの隆興をもたらし、本件はその起点となった機器として、学術上の価値が特に高い。
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画像


Description
解説
本物件は、飯島澄男が1991年に多層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube, CNT)を、1993年に単層カーボンナノチューブを世界で初めて発見した際に使用した高分解能透過型電子顕微鏡(型番Topcon EM-002B)である。当時超高分解能を可能とする200kV加速電圧を持ち、材料の微細構造の画像化や電子線回折による結晶構造解析を可能にし、製造販売開始から多くの卓越した研究成果に貢献した電子顕微鏡である。観察モードから電子回折モードに変えても電子ビームが安定した優れた特徴を有し、特に微小結晶の観察・構造評価が容易であることからナノカーボン材料研究にとどまらず、当時の化合物半導体や高温酸化物超伝導体関連の研究開発に大きく貢献した。
1991年、飯島は日本電気株式会社(NEC)基礎研究所(茨城県つくば市)において、フラーレン生成実験に用いられた炭素電極上の堆積物に興味をもち、本物件により観察を開始した。その過程で、従来知られていなかった針状・管状の炭素構造体であるCNTを世界で初めて発見し、高分解能電子顕微鏡像と電子線回折の解析からその原子配列と多層同心円筒構造の解明に成功した。これらの成果は同年Nature誌にも掲載され、世界中に強い衝撃を与えた。
CNTは極めて細い一次元の構造体で、炭素原子が六角形に配置されたシートを丸めた円筒構造をもつ。シートの筒が1層のものが、単層CNT、2層のものが2層CNT、それ以上の層数の場合、多層CNTと呼ばれている。極めて優れた機械的強度、電気伝導性、熱伝導性を併せもつことから、ナノサイエンス・ナノテクノロジー隆興の出発点となった物質である。
この発見は、単に新物質を見出したにとどまらず、「原子レベルで構造を可視化し、新たな物性概念を提示する」という物理学研究の在り方を象徴するものである。本物件を使った飯島のCNTの発見を契機として、CNTの理論予測と実験的実証、量子輸送現象の研究、ナノエレクトロニクスや材料科学への応用研究が世界中で急速に進展し、ナノスケール物理の確立に決定的な役割を果たした。
本物件は、こうした歴史的転換点を直接生み出した実験装置そのものであり、日本において達成された世界的学術成果を体現する物理遺産として極めて重要である。現在、CNTは基礎物理から産業応用に至るまで幅広く利用されており、その起点となった本物件は、次世代に継承すべき学術的価値を有している。
Location
所在地
Public Access
公開状況
一般には公開されていない。